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給与の高さはやる気に繋がるのか

 

昇給による満足は長続きしない

お金とやる気の関係は、多くの研究があります。古くはハーズバーグの動機づけ衛生理論が有名です。ハーズバーグによると、給料は不満につながる衛生要因と捉えています。「彼、彼女よりも私の方が給料が低い」「他社の方が給料が高い」といった不満が出やすいからです。

 

ダニエル・ネトルの研究によると、所得や社会的地位による満足感は長続きしないことが明らかになっています。企業に当てはめれば、給料や昇進に不満を持っている社員を昇給や昇進させても、やる気が長続きすることは多くありません。半年も経てば不満を言い出します。

 

 

●給料で我慢をさせられる

では、給料の高さはどういう効果があるのでしょうか?

アメリカのコネチカット大学のシャロー・ベーカー博士の研究によると、人はお金をもらえると嫌なことでも我慢が続くことが分かりました。

私は若い頃に都銀系のシンクタンクで働いていました。同僚に都銀の出向者が何人もいました。彼らは30歳前後で1000万円前後の年収がありました。しかし、飲みにいくと仕事の不満ばかりをいい、モチベーションが高いとはとても思えない状態でした。

会社を辞めるとは一切言いません。上司の前ではニコニコと愛想をふります。高い年収をもらえると、人は我慢ができるのです。ただ、幸せな人生とは言えません。会社にとってもやる気が低い人に高い給料を支払っているのは好ましいことではありません。

それでも、給料が高いと不満があっても我慢できるので、定着率は高くなります。高い給料の効果は定着率を高めることだと理解するとよいでしょう。

 

「給料上げたからやる気になっているはずだ」「給料を上げたのに感謝していない」などという発言を経営者から聞くことがありますが、勘違いです。社員からすると「嫌な会社だけど給料が高くなったからもう少しいようか」といった気分でしょう。

私はそれでも給料を高くする効果があると考えています。人が定着することはいい組織を作る最初の一歩ですから。