東洋医学ことはじめ

数千年の歴史を踏まえる東洋医学は、自然の移ろいをつぶさに観察し続けた農耕民族から生まれた医学です。実りの秋を迎えるまでには、豊かな土作り、時期を選んで種を播き、都度都度の手入れをしながら、植物の可能性を引き伸ばし育む。そんな農耕民族の医学は、身体もまた田畑のように整え、自らの力として成長を促すことに主眼を置いています。

 

東洋医学は、農耕民族による素朴な人間観察を積み重ねと生活の智慧が結びつき、診察法や治療法として確立された医学体系なのです。時代の波にのまれても淘汰されずに、脈々と受け継がれてきたこの東洋医学は、西洋医学が主流の現代に於いても未だ輝きを失わず、様々な疾患に適応があることが分かっています。

 

以下は、WHOで臨床上、鍼灸が適応とされた症状や疾患です。

神経系疾患

神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・

頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

運動器系疾患

関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・

腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)

循環器系疾患

心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

呼吸器系疾患

気管支炎・喘息・風邪および予防

消化器系疾患

胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・

肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

代謝内分秘系疾患

バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

生殖、泌尿器系疾患

膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎(ED)

婦人科系疾患

更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

耳鼻咽喉科系疾患

中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・

へんとう炎

眼科系疾患

眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

小児科疾患

小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

 

如何でしょうか? 「こんな病気にも効くの?」と、意外に思われた方もおられるでしょう。

病気以外のことで、私が東洋医学を学んで、組織の中で役に立ったと感じたエピソードを一つお話ししましょう。

私はこれまでに様々なクリニックで勤務して参りました。鍼灸治療のことだけでなく、職場では多岐にわたる仕事があり、訴訟を意識するようなことまでも起こりました。

 

とある忙しくハードな医療現場では、スタッフの入れ替わりも激しく、受付さんもトイレに行けず膀胱炎になるほど過酷でした。そのような人手が不足がちな職場では、いち早く状況を察知し、対応することが求められます。

この頃の私が職場の人間関係で得意だったのが「このスタッフは辞めるな」という勘が人よりもよく働くこと。また、「今日の掃除はどのスタッフが行ったか?」や、スタッフの足音やパソコンのキーボード音で、「どのスタッフがどこに居て、どの用事を頼めるか?」などの判断が素早く出来て、時間の節約ができることなどでした。

 

忙しくなればなるほど(自分自身の仕事が増えないように、)感覚が冴えてくるものです。忙しいと人は集中力を失い、ミスやトラブルも増えてしまうし、人間関係もギスギスしていきます。特に医療現場でのミスは、患者さんのお身体に直接影響するので、許されません。時間に追われる中、危機を回避する為には、直観的に把握する力が必要になってきます。この直観力は、実は誰でもが本来持っているもので、言わば生きるための力で本能に根差した野性的な感覚のように思います。

 

私は鍼灸というフィールドで、常に自分の目や手を繊細な感覚で用い“患者様のお身体の状況を感じとって察知しよう”とか、それに対し“即座に反応しよう”として直観力を磨いていたので、ハードな職場環境で発揮できたのだと思います。

 

皆さんが、東洋医学についての理解を深め、職場で冴えた直観力を発揮し、効率よく仕事をすすめ時間を節約できるようになれば、どれだけ助かられるでしょうか?また、東洋医学の知恵を身に着けることで、より健康に近づけば、趣味やご家族との時間も、今よりいっそう楽しめるのではないでしょうか?

 

東洋医学の中には、漢方・鍼灸・按摩・気功・導引などの療法がありますが、もっと身近に感じて頂くために、今後は私の専門である「鍼灸」を中心に、具体的な内容に触れつつ東洋医学をご紹介していこうと思います。 お楽しみに♪